10. アルジュナウィジャヤ

 

アルジュナウィジャヤは, マジャパヒト期,ハヤム・ウルクの御代にムプ・タントゥラルによって書かれた2篇のカカウィン形式の詩文の一つで,今なお人々の間で愛されている物語です。以下は,Zoetmulder 博士の書[1]の中の話の抜粋です。

 

    「世界を征服せんと各地を荒し回っていたレンカの悪魔王ダサムカが,ナルマダ川の上流で宝飾リンガに祈っていると,水嵩が増し,丘の上に避難することを余儀なくされる。同じ川の河口近くには,アルジュナ・サハスラバフが妃と軍を伴って遊興のために訪れていて,水浴や魚獲りの利便のために,サハスラバフ(千手の意)を使ってダムを拵えていたのである。アルジュナに他意はなかったがダサムカが怒り,戦となり,終にはアルジュナがバトルの末にダムサカを捕獲する。アルジュナの妻チトラワティは夫が死亡したとの偽情報を受けて既に自害していたがナルマダの女神の蘇生水で甦る。ダサムカは彼の祖父である聖者プラスティアの嘆願によって釈放され,国に帰る。アルジュナはマヒスパティに君臨し全世界の幸福に努め,ダルマ(法)を広める。」

 

    なお,この物語はラーマーヤナの中の挿話に拠るとされています。[2]

 

 


[1] P. J. Zoetmulder, Kalangwan, A Survey of Old Javanese Literature, Martinus Nijhoff, The Hague 1974.

[2] Malini Saran, Vinod C. Khanna, The Ramayana In Indonesia, Ravi Dayal Delhi 2004